カフェ開業において、物件選びは最も重要な決断のひとつです。どれほど素晴らしいコーヒーを提供できても、物件選びを誤ると集客に苦労し、閉店につながるリスクがあります。逆に良い物件を選べば、集客の苦労が大幅に減り、経営が安定しやすくなります。
本記事では、カフェ開業を検討している方に向けて、物件の種類・立地の選び方・内見時の確認ポイントをわかりやすく解説します。
物件の種類を理解する:居抜き vs スケルトン
カフェ物件には大きく2つの種類があります。まずこの違いを理解しておくことが物件選びの第一歩です。
居抜き物件
前テナントが使用していた内装・設備がそのまま残っている物件です。厨房設備・シンク・エアコン・照明などが残っているため、内装工事費を大幅に抑えられるのが最大のメリットです。
スケルトン物件と比べて内装工事費だけで半分程度に抑えられるケースが多く、開業初期の資金負担を軽減できます。特に前テナントがカフェや飲食店だった物件は、厨房レイアウトをそのまま活用できるため非常に効率的です。
ただし注意点もあります。前テナントが撤退した理由(立地・競合・家賃など)をしっかり調査することが重要です。また、残置設備が老朽化していて使えない場合は、結局全面改装が必要になり居抜きのメリットが消えてしまうこともあります。
居抜き物件を選ぶ場合でも、飲食店営業許可は自分で新たに取得し直す必要があります。前テナントの許可をそのまま引き継ぐことはできません。
スケルトン物件
内装を全て撤去した状態(コンクリートむき出し)の物件です。内装を一から自由に設計できるため、こだわりのある店舗デザインを実現しやすいのが特徴です。
デメリットは内装工事費が高額になること。1坪あたり30〜80万円かかることも珍しくなく、10坪の物件なら内装工事だけで300〜800万円程度になります。開業資金に余裕がある場合や、ブランドイメージを重視する場合に向いています。
| 比較項目 | 居抜き物件 | スケルトン物件 |
|---|---|---|
| 内装工事費 | 低い(半額以下になることも) | 高い(1坪30〜80万円) |
| デザインの自由度 | 低い(前の内装を活用) | 高い(一から設計) |
| 開業までの期間 | 短い | 長い |
| 向いているオーナー | コスト重視・初期費用を抑えたい | こだわりのデザイン重視 |
初めてカフェを開業する場合は、居抜き物件から始めることをおすすめします。資金リスクを抑えながら経営のノウハウを積み、2店舗目以降でスケルトンにこだわるという戦略が現実的です。
立地選びの3つの評価軸
①視認性(見えやすさ)
カフェは衝動買い・ふらっと立ち寄りの比率が高い業態です。そのため、通行人が自然と目に入る位置にあるか(視認性)が最初の評価軸になります。
路面1階を選ぶことを原則とするのがおすすめです。ビルの2階・3階や路地裏は視認性が低く、「知る人ぞ知る」スタイルで差別化できる実力がなければ集客に苦労します。初めてのカフェ開業では、原則として路面1階を選びましょう。
②ターゲット客層の動線
単に「人が多い場所」を選ぶだけでなく、ターゲット客層のライフスタイル動線に物件が重なっているかを判断することが重要です。
例えば、会社員をターゲットにするなら駅前・オフィス街、主婦・ファミリーをターゲットにするなら住宅街・スーパー近く、学生をターゲットにするなら大学・専門学校の近くが向いています。
立地タイプ別の特徴を整理すると以下の通りです。
| 立地タイプ | 有利な点 | 注意点 |
|---|---|---|
| 駅前・商業エリア | 通行量が多い。認知されやすい | 家賃が高い。競合が多い |
| 住宅街 | 固定客が付きやすい。家賃が安い | 新規集客が難しい。週末中心になりやすい |
| オフィス街 | 平日モーニング・ランチの需要が高い | 土日の集客が難しい |
| 郊外・ロードサイド | 広い物件が多い。駐車場確保が可能 | 車客の視認性確保が必須 |
③家賃と売上のバランス
どれほど良い立地でも、家賃が高すぎると経営を圧迫します。一般的に家賃は月間売上の10%以内に収まることが健全な経営の目安です。
例えば月間売上100万円を目標にするなら、家賃は10万円以内が目安です。家賃が売上の15%を超えると経営が苦しくなりやすいと言われています。
内見時に必ず確認すること
物件の内見では見た目だけでなく、以下の項目を必ず確認してください。
電気容量
カフェはエスプレッソマシン・製氷機・冷蔵庫・食器洗浄機など電気消費が多い機器を多数使用します。電気容量が不足していると、ブレーカーが頻繁に落ちてしまいます。30A以上あるかを確認し、必要に応じて電気工事費を見積もりに入れておきましょう。
給排水の状況
厨房の給排水位置は変更が難しく、変更すると工事費が高額になります。給排水の位置が希望するレイアウトと合っているかを内見時に確認しましょう。
換気設備・ダクト
カフェでコーヒーを焙煎したり、フードを調理したりする場合は換気設備(ダクト)の状態確認が必須です。新たにダクト工事をすると高額になります。
居抜き設備の状態
居抜き物件の場合、シンク・冷蔵庫・食器洗浄機・コンロが正常に動くかを現地で確認してください。動作不良の設備は撤去費用が発生する場合もあります。
保健所の基準を満たせるか
飲食店営業許可を取得するためには、二槽シンク・手洗い器・扉付き食器棚などの設置が必要です。内見後に管轄の保健所に間取り図を持参して事前相談することを強くおすすめします。
物件探しの方法
不動産ポータルサイト
SUUMO・アットホーム・ホームズなどの不動産ポータルサイトで「テナント」「貸店舗」で検索できます。エリアと広さ・家賃を絞り込んで探しましょう。
居抜き物件専門サイト
居抜きストア・テナントABCなど、居抜き物件に特化したサイトがあります。飲食店の居抜き物件を効率よく探せます。
地域の不動産会社への相談
ポータルサイトに掲載されていない物件も多くあります。開業したいエリアの不動産会社に直接相談すると、非公開物件を紹介してもらえることもあります。
直接交渉
閉店した飲食店に直接連絡して居抜き譲渡を交渉する方法もあります。オーナーと直接交渉できるため、仲介手数料を節約できるケースもあります。
物件契約前に確認するチェックリスト
✅ 家賃は月間売上目標の10%以内か
✅ 路面1階・視認性は確保されているか
✅ ターゲット客層の動線と一致しているか
✅ 電気容量は30A以上あるか
✅ 給排水の位置は希望レイアウトと合っているか
✅ 保健所の事前相談は済ませたか
✅ 前テナントの撤退理由を調査したか
✅ 近隣の競合カフェを調査したか
✅ 契約期間・解約条件を確認したか
✅ 原状回復義務の範囲を確認したか
まとめ
カフェの物件選びは、コンセプト・ターゲット客層・予算のバランスから逆算して考えることが基本です。初めての開業なら居抜き物件で初期費用を抑え、視認性の高い路面1階を選ぶのがおすすめです。
内見時には電気容量・給排水・換気設備・保健所基準を必ず確認し、契約前に管轄の保健所に事前相談を済ませておきましょう。良い物件との出会いがカフェ開業の成功への第一歩です。
開業準備全体についてはカフェ開業の初期費用まとめやカフェ開業に必要な資格・許可まとめもあわせてご覧ください。